「UMPC」と略称で呼ばれるタイプの小型ノートパソコンには、熱狂的なファンがずっとついています。かつてのVAIO type Pやtype U、東芝のリブレットなどに熱い視線を送っていた人たちです。
いまだと、ASUSのT90ChiあたりがこのクラスのPCに該当するでしょうか。
一般的なモバイル型のノートパソコンよりも二回り以上小さなサイズを実現しながら、実用的なキーボードを備えることで、気軽に持ち出せる出先での物書き用PCとして何気に高い実用性を持つパソコンです。
そんなジャンルにクラウドファンディングから、また1台ユニークなマシンが登場しそうです。
今回はユニークな特徴を備えた小型PC「KS-PRO」をご紹介します。
ハイエンドSnapdragon搭載
Snapdragonというのはクアルコム社が製造している本来はスマートフォン向けの「SoC」と呼ばれるチップです。CPUのほか、スマートフォンで必要となる様々な機能を持つチップを集積した、Systemn on Chipと呼ばれるタイプの半導体です。
KS-PROではその中でも今時点でのハイエンドに当たるSnapdragon 835というチップを搭載しています。
Snapdragonシリーズはソフトバンクが買収したことでも話題となった「ARM」社の設計したCPUを使っています。パソコンで一般的に使われているインテルのCPUとは全く別の思想で作り上げられたチップですので、プログラムなどには全然互換性がありません。
ですが、先日マイクロソフトが2017年末を目処に、ARM向けの(正確にはSnapdragon向けの)Windows 10をリリースすると発表を行ないました。KS-PROはこれをあてにして開発が行なわれているようです。
スマートフォン向けのWindows 10 Mobileではなく、フルセットのWindows 10を搭載することが明記されています。
CPUが別物なのに従来のWindowsアプリが動く!
このSnapdragon向けのWindows 10の最大の特徴は、CPUの仕組みが全然別物なのに、従来のWindows向けのアプリ(Win32アプリ)をそのまま動かせてしまえるところです。通常のやり方だと動いたとしてもものすごく性能が悪くなってしまうのですが、様々な工夫を組み込んでいるようで、開発発表時のデモ版でも、既にある程度実用的な性能で従来のアプリが動くようになっていました。
以前、Windows RTという、ARMタイプのCPU向けのWindowsが世に出たこともあったのですが、その時には普通のWindows向けのアプリが動かせなかったため、結局普及することなく消えてしまいました。
マイクロソフトは今度はWindows 10で、そのリベンジも狙っているのだと思います。
スペック
KS-PROはSoCにはSnapdragon 835を搭載。メインメモリは8GB、ストレージにはSSDを128GB搭載しています。一般的なPCとしてみてもなかなかのスペックを誇ります。ディスプレイには8.2型の有機ELディスプレイを採用。解像度は2,560 x 1,440ドットと非常に高解像度になっています。
センサーにはGPSも備えるなど、スマートフォン的な観点でもフルスペックと言っていいものが載っています。
サイズの方は、246mm x 150mm x 16mm、重量は640gです。
多分、男性のジャケットの内ポケットに収まると思いますが、重量的にちょっと厳しいことにはなりそうですね。
同ハードのAndroid版も準備
KS-PROはこのスペックで600ドルの出資で入手可能となっています。通常のモデルはASCII配列のキーボードになっていますが、JIS配列の日本語キーボードが準備されるのがこの手の製品としては珍しいところかもしれません。
サイズ的にはキーピッチが16.5mmから大きくても17mmが限度だと思います。手の大きい方には厳しいかもしれませんが、一般的な成人男性の指の太さならば、十分にタッチタイプが可能なキーボードになっているはずです。
まったく同じハードを使うAndroid7.0版も準備されていて、こちらは450ドルで入手可能です。
パソコンへの依存度が高い方はこの手のデバイスが一つあると、少し生活が変わる可能性もあります。小型で良いキーボードを備えた物書きマシンが欲しい方は、ちょっと注目して良いパソコンかもしれません。