一般的なキーボードはホームポジションに指を置くと、手首を少し腕の外側に曲げるような形にしないときちんとキーに指を置くことができません。その分、タイピング時には手首に少し余分な負担がかかります。
このため、キーの右手分の守備範囲と左手分の守備範囲を完全に分離して、ハの字型に少し開くタイプのキーボードが人間工学的には優れているとされていて、このタイプのキーボードはエルゴノミクスタイプのキーボードと呼ばれたりします。
このエルゴノミクスタイプのキーボードの一種とも考えられる、極めて独創的な発想のキーボードが発売されました。
発売元は台湾のMistelというメーカーで、製品名は「Barocco」です。
かなり「変態的」とも見える、このものすごくユニークなキーボードをご紹介します。
キーボードが2つに「割れる」
Baroccoでは人間工学的な対処をある意味ものすごく「乱暴」なやり方、力業で強引にやってしまいました。キーボードが左手用、右手用に「分離」します。分離と言うよりも見た目は板チョコが「割れた」ようなそんな感じになります。
また、2つをドッキングさせて普通のキーボードとしても利用できる仕組みになっています。
分離させた片割れを全く知らない人に見せたなら、ジョークグッズか利用している人がブチ切れてキーボードを破壊した、と思うかもしれません。それぐらいに分離状態のルックスは衝撃的です。
分離させた状態で、左右両手首が真っ直ぐになるような角度にキーボードを配置すれば、手首の負担が減り人間工学的には優れた配置になります。それ故、この製品はエルゴノミクスタイプを名乗っているのでしょう。
コンパクトタイプの英語配列
Baroccoは英語配列のキーボードで、JIS配列のものよりも通常の文字のキーが1列少なくなっているはずです。また、Enterキーも横長の英語配列ならではの形をしています。JIS配列になれた方、日本語入力はかな直接入力で行っている方には、残念ながら使いにくい配列になっていると思います。
また、Happy Hacking Keybordなどのように、ファンクションキーを省いたコンパクトタイプとなっていて、設置面積はとても小さくできるタイプです。
ちなみにこのタイプのキーボードでは、ファンクションキー相当の入力はFnキーと数字キーのコンビネーションで行う形になるはずです。
キースイッチはCherry製のメカニカルスイッチ採用の本格派
見た目とコンセプトこそぶっ飛んだ製品ですが、実は作り込みの方はかなりまじめにまとめられています。ゲーミングキーボードなどでは定番中の定番、ドイツメーカーの手になるメカニカルキースイッチのCherryブランドのものを採用していて、キータッチの異なる4種類のキースイッチ搭載製品を選択できるようになっています。
Cherryブランドのキースイッチは、「茶軸」「黒軸」「青軸」「赤軸」と呼ばれる4つのタイプがあって、クリック感の有無、押し下げ圧の違いでユーザーが好みに合わせて選択可能になっている製品です。
スイッチのコストはかなりかさみますが、タイピングの際の気持ちよさはとても優れた製品で、耐久性もとても高くなっています。
使用上の難点としては、キーのタイプ音がかなり大きめなことです。この音がタイプする際の気持ちよさを増幅してくれてはいるのですが、会社など他に人がいる場所ではタイプ音が「騒音」になりかねないぐらいの派手な音を出します。
この部分は注意して製品を選択すると良いでしょう。
著者は黒軸タイプを長期間使用してかなりの文字数入力しましたが、キーを底まで押し切るにはある程度の重さのある打ち心地で、押し込むに従って反発力が強くなるタイプでした。
そのキーの返りの強さを使って、タイピングのリズムを作るようなタイプのキースイッチだったと思います。
クリック感はありませんがタイプ音はやはり大きめですので、使用場所には注意した方が良いキースイッチです。
左手用部分をゲームの左手用キーボードに使う手も
元々コンパクトなキーボードですが、左右に分離させることでさらにそれぞれの設置面積は減らせます。それを活かして、ゲームの際の左手用キーボードとして使ったり、マクロ機能を活用してフォトレタッチやお絵かきソフトのコマンド発行用キーボードに使う手もありそうです。
衝撃的とも言える見た目とは裏腹に、実用性も実はかなり高いキーボードかもしれません。